茶室だより

令和八年 家元初釜 2026年1月18日(日) 帝国ホテル茶室 東光庵[東京都千代田区]

寄付

令和八年一月十八日、家元初釜が恒例の帝国ホテル東光庵にて晴れやかに催された。都心の冬とは思えぬ穏やかな一日となり、会場には新春を寿ぐ門人らの笑顔があふれ、和やかでめでたい初釜となった。

濃茶席は東光庵に設けられた。寄付には宙宝宗宇の画賛「人間万事」を掛け、本席の床には春屋宗園筆「巴陵吹毛剣」。新年最初の席にふさわしい、張りつめた気と清新な趣が席中を引き締めた。花入には遠州作の竹一重切、炉縁には熱田神宮古材を用い、道具の一つ一つに格調高い取り合わせが見られた。

馬文釜

今年の干支は午。馬は武家にとってきわめて大切な存在であり、大きく駆けてゆくその姿には、時代を切り拓く力強さと吉祥が重ねられる。そうした願いを託すように、席中には馬に因む道具が随所に散りばめられた。香合は「瓢箪駒」、釜には野馬地文、薄茶席では金馬盆も用いられ、新春の寿ぎにふさわしい明るい趣向となった。いずれも、今年一年が勢いよく前へ進む年となるようにとの願いを感じさせた。

また、今年のお題は「明」。暗いニュースの少なくない昨今にあって、せめて一碗の茶が人の心に灯りをともすものであってほしい――そうした願いが、濃茶席の志戸呂蝋燭形茶入に託された。静かな火を思わせるその姿は、席の中心にあってひときわ印象深く、茶の湯の祈りのようなものを感じさせた。

茶入

なかでも白眉は、遠州から宗旦に贈られたと伝わる白銀の茶杓である。宗旦はこれを反古紙で張り箱を作り、「水屋用」と記して秘蔵したという。名物として飾り立てるのでなく、むしろ日々の茶の営みの中に深く蔵したという逸話に、茶人の美意識と心の機微がしのばれる。遠州と宗旦、両者を結ぶこの一杖は、初釜の席に格別の重みと物語を添えていた。

さらに今回は、濃茶席において特筆すべき変化があった。コロナ禍以降、呈茶および展観のみとなっていたが、久方ぶりに家元による点前が復活。席中には静かな緊張と期待が満ち、参会者はその一挙手一投足に見入る様子であった。

笑顔あふれる参加者

一方、月歩の間の薄茶席では、家元直門が点前を披露。老若男女それぞれが日頃の稽古の成果を発揮し、席は終始和やかな活気に包まれた。小堀月浦筆の墨蹟を床に、紅梅白梅の銘を持つ茶杓などの取り合わせが新春の明るさを引き立て、濃茶席とはまた異なる親しみある趣が感じられた。

福引

(直門有志)

撮影:熊谷秀寿