茶室だより

東茶会 2023年3月5日 東京美術倶楽部 花の間 [東京都港区]

花の間 茶会の様子

東京美術倶楽部で行われている東茶会は、東京茶道研究会の略称で、戦災後、東京の茶道界復興のためにはじまったという格式高い茶会です。

先代家元が昭和34年から毎年のように掛けていたお席で、光栄にも個人としては初めてお席を持たせていただく運びとなりました。

場所は花の間、薄茶席でしたので、時節柄、道具は上巳の節会を主題に組んでみました。

花の間 床飾り

床は玉舟の一行「八角磨盤空裏走」。大変難解な禅語でテーマからは外れるのですが、 私も空を飛び回る磨盤の如く我武者羅に頑張っていきたいという思いを込めて、東茶会での初陣にこの軸を選んでみました。 花入は江戸初期の小鼓。小袖の蒔絵がしてあり、実際に使われていたものを見立て、貝母に蕗の薹を添えてみました。 広い床の間ですのでお花を大きく入れるお席主が多いそうですが、草物だけを二本という簡素な花を一席目のお正客様にお褒めいただき、ホッといたしました。

硯屏通い薄茶点前 点前座

当流ならではの特色をと考え、遠州が考案した硯屏を使ったお点前でお茶を召し上がっていただきました。 硯屏は青磁七官手、他にも筆筒を思わせる水指や筆洗形の茶碗、水滴の蓋置など、点前座は文房具を見立てたものを取り混ぜ、 遠州公が好んだ華やかな王朝文学の風情を少しでも表現できていたらと思います。

菓子は太宰府藤丸製 雛遊び

東茶会という晴れ舞台の機会をいただき、久々の大寄せ茶会で反省点は諸々ありますが、 ご来場の皆様にお寄せいただいた励ましのお言葉や、多くの方に支えていただいているという実感を糧に今後も精進したいと思います。

家元嗣 小堀宗峯