茶室だより

令和八年遠州忌法要茶会 2026年3月22日(日) 護国寺茶寮[東京都文京区]

春のやわらかな陽光に包まれた都内の古刹、護国寺において、小堀遠州の遺徳を偲ぶ遠州忌が厳かに、そして華やかに執り行われた。今年は遠州が正保四年二月六日に没してから三百八十年忌の節目にあたり、記念の年にふさわしい特別な趣向が各席に凝らされた。

献茶式

献茶式は忠霊堂にて執行され、遠州寿像を掲げた床を前に、静謐な空気の中で一服が供えられた。正倉院御物写の南鐐仏具や遠州好みの釜・風炉など、由緒ある道具が整えられ、会場には凛とした緊張感が漂った。

とりわけ注目を集めたのは、楓の間に設けられた家元席である。「春の山」を主題とした道具組は、古筆「右衛門切」を床に掛け、山辺を旅する情景を想起させる構成となった。釣舟形の花入に挿された季の花、鹿文の香合が静かな山野の気配を添える。茶入「村消」と遠州作の茶杓「山桜」に記された和歌が響き合い、寄付に置かれた遠山文の炭斗や、ほのかに紅を帯びた朱鷺の羽箒が春の息吹を演出した。全体として、山桜のほころびを思わせる、爛漫の春を感じさせる取り合わせであった。

家元席

他席においても、それぞれに趣向を凝らした設えが来場者の目を楽しませた。月窓軒では、世界的現代美術家である李禹煥の書「対話」が床を飾り、その作品である祭器や李朝の白磁を取り合わせ、簡素にして深みのある空間が構成された。伝統と現代が静かに響き合うこの席は、多くの来客に新鮮な印象を与えた。

月窓軒

そのほかの濃茶席・薄茶席・立礼席・番茶席においても、遠州好みの道具や各時代の名品が取り合わされ、明るく軽やかな春の趣が随所に表現された。

宗澄庵

当日は桜がほころび始めた境内に、多くの参列者が集い、歴史と美意識が息づくひとときを堪能した。三百八十年の時を超え、遠州の美意識はいまなお鮮やかに息づいていることを実感させる一日となった。

立礼席

青年部席

(直門有志)

撮影:熊谷秀寿