茶室だより
ウィメンズエンパワーメント茶会 2022年10月27日 護国寺・月光殿[東京都文京区]
今年は私にとって、一つのターニングポイントとなった年になりました。自身では学生時代から外国人向けの茶会やワークショップを行ってまいりましたが、そうした種まきが一つの形となって結実した茶会を行いました。
10月27日、米国金融会社社長夫人、某国元首相夫人をメインゲストにお迎えし、総勢十四名の海外要人ご夫人の御一行様をお茶でもてなす機会を得ました。
幸いにも、近江の三井寺から移された重要文化財の護国寺・月光殿を使わせていただくことができましたので、書院造りの床の間に唐物や文房具を飾り、格式あるしつらえをご覧いただき、席は立礼でゆったりと座っていただきました。
案内役のアレックス・カー氏とともに、茶道のこと、道具のこと、点前のこと、「伝統文化の中の女性」についてなどご説明をしたのちに、多くの興味深いご質問をいただきました。「帛紗の畳み方は折り紙と関係があるのか」など、自分では考えたこともないご質問もいただき、とても勉強になりました。とあるゲストからは「エリザベス女王に紅茶をいただいたときもゆったりした動きで、まるで茶道のようだった」という貴重なお話も伺いました。
月光殿床の間
今回の茶会で私が特にお伝えしたかったのは、伝統文化の中での女性の立ち位置です。明治維新後、茶道という文化は女性に支えられてきたにもかかわらず、実際は女性の地位は高くありません。主だった流派の家元はほとんど男性ですし、裏千家の業躰(家元高弟)は、歴史上一人の女性(濱本宗俊氏)を除いて全て男性であると聞きます。大寄せ茶会でも男性が上座に座ることが多く、そうした現状をかねて不思議に感じておりました。その根底には「男性の茶の湯は芸術的あるいは禅的な道(どう)、女性の茶の湯は所詮『習い事』」といった通念があるように思います。
時代の移り変わりとともにそうした通念も変わる過渡期が来ていると感じますが、今私が抱いている率直な思いを、世界各地で女性のエンパワーメントのために尽力されている方々の前でお話しできたことをうれしく思いました。
月光殿正面にて撮影
家元嗣 小堀宗峯