茶室だより

令和三年 遠州忌 2021年5月9日 法身寺[東京都新宿区] 

5月9日に令和三年遠州忌法要および茶会が執り行われました。
三回目の緊急事態宣言が発令された中でしたが、松籟会役員および直門有志の限られた参列者で、会場も護国寺から菩提寺の法身寺に移し、感染症対策を十分に行った上で開催されました。
まず本堂で、小堀宗峯家元嗣により点てられた一服が仏前の小堀遠州流(当流)十二代家元宗舟政休筆 遠州寿像前に献じられました。続いて、法身寺の小菅大徹先代ご住職と小菅哲成ご住職による読経と焼香で合掌し、遠州公の遺恩に拝謝いたしました。

十二代宗舟政休筆 遠州寿像

その後、大徳寺孤篷庵忘筌を写した茶室「保楽庵」に場所を移し、近年師範のお免状を取られた直門有志により濃茶席が持たれました。
床は千宗旦参禅の師であった清巌筆「莫妄想(まくもうぞう)」。あらゆる不安は妄想から始まるゆえ、思惟分別することなかれ、今という時を十分に生くべしと説く禅語です。何事も不安の多いこの時代に、示唆に富む言葉です。
遠州作の円窓竹花入には大山蓮華と都忘れが入れられ、初風炉らしい清新な趣です。
香合は前漢時代平壌周辺に築かれた楽浪郡古材で、鈍翁好みにより名取川写として作られたものです。二千年の時を超えた古材はずっしりと重みがあります。

清巌筆「莫妄想」

茶入は小堀家伝来の「不聞(きかざる)」、茶杓は小堀遠州流四代宗舟政孝作で銘は「都」です。
法身寺の中興開基が四代宗舟です。茶入の不聞は、遠州公から門下の神尾備前守元勝に授けられ、元勝長女が当流三代宗貞正十に嫁いだ際に輿入れの品として持参したもので、正十の嫡男である宗舟以後、さまざまな困難を乗り越えて旗本小堀家に連綿と伝承されてきたものであります。法身寺と小堀家のつながりを示すこれらの道具は、この時代、そして法身寺での遠州忌だからこそより意味を増すように感じました。

茶室「保楽庵」

水屋は青年部が担当しました。家元のご指導の下、青年部でも相談して各服点ての濃茶碗をお盆に載せて運び、お客様にお盆から取っていただく形で、接触を可能な限り減らすようにしました。出し袱紗もなくお客様は戸惑いもあったようですが、安心して召し上がっていただくことが一番大切かと思い、そのようにいたしました。
コロナ時代での茶道のあり方が日々模索されていますが、今回のお茶会でもその必要性を実感しました。

干菓子は清晨庵製の花菖蒲

青年部部長 小堀宗晋