茶室だより
コロナ禍の中でのお正月 2021年1月1日 家元宅[東京都練馬区]・1月2日 円覚寺[神奈川県鎌倉市]
新型コロナウイルスの脅威は依然として衰えぬままに、新たな一年が始まりました。毎年年末は稽古が終わると茶室の大掃除、炉中の濡れ灰の作り直し、障子の張り替え、ガラス拭き、庭石の磨き上げ、炭切りなどで慌ただしく過ぎていきます。
今回も直前まで新年準備に追われたものの、納会がなかったため少し余裕がありましたので、門飾り用の花入を別宅の竹林で切ってきて作ってみました。松とすでに綻びかけていた庭の梅を入れ、松竹梅の取り合わせとしました。
真竹で作った花入
元旦は家族でお節を囲んで一献をまじえた後に、一年で最初の一服をいただきます。家元から順に点前座に座り、交代でお茶を点てていきます。二服三服といただき、それぞれの一年の計を語りながら、皆無事に新たな年を迎えられたことを寿ぎました。
朝日焼十六世松林豊斎氏よりお送りいただいた辛丑のお茶碗(左)と先々代猶香庵作丑年茶碗(右)
その後近くの氏神様に初詣に参りましたが、境内に鈴の音はなく、参拝も午後5時で終わりと、例年とは違う雰囲気に一抹の寂しさを感じます。コロナウイルス流行の一刻も早い収束と日常の再開を願い、手を合わせました。
二日は北鎌倉円覚寺まで、老師へのご挨拶と墓参に伺いました。国宝舎利殿と僧堂の間に当家四代最乗院殿宗舟の墓碑が立っており、お正月にこちらにお参りさせていただくことが先代時代からの恒例となっています。
円覚寺で最も聖なる場所であり、日々厳しい修行が行われている境内には、冬の寒さだけではないぴりりとした空気が張りつめています。澄みわたる真っ青な空のもと墓前に手を合わせると、二人の雲水さんがお経をあげてくださいました。松の枝もお供えいただいており、大変な修行の合間に、そして新年のお忙しい中にもこうしてきれいにしてくださっていることがありがたく、頭が下がります。毎年墓参に来るだけの私たちですが、たくさんのことを教えていただくのです。
円覚寺境内
老師へのご挨拶は時節柄ご遠慮させていただくつもりでおりましたが、雲水さんにぜひと言っていただいたので、立ち寄らせていただくことにいたしました。一般向けの禅会は長らく休止となっているため久々にお目にかかった横田南嶺老師が、いつもと変わらぬ朗らかさで迎えてくださいました。昨年3月に生まれた息子ともどもご挨拶させていただきましたが、いつもは人見知りが激しい息子が老師に拝眉した途端にニコニコ笑顔になっていたのが印象的でした。
老師にお会いするたびに、もっともっと努力し精進しなくてはと襟を正す気持ちになります。若くして管長という立場になられた老師は、いち早くオンラインでの座禅会やYouTube法話に取り組まれ、円覚寺のブログでは「今日の言葉」として毎日(!)禅の教えを説いてくださっています。1月1日のブログに「正月の朝早くからお勤めをしますが、その前のわずかな時間を使って、こんな文章を書いています」とあるとおり、どんな時もためになるお言葉を発信してくださっていて、「忙しい」という言い訳で時に稽古や勉強をおろそかにしてしまう自分の行いを振り返ると恥ずかしい限りです。
思えば父が若い時分、毎朝4時に起きて、大学に行くまでの時間に稽古をしていたと聞きます。時間がないとか、体調が悪いなどと言い訳をせず、この渦中に時間があるということを幸いと感謝し、茶道の勉強に努めることを私の新年の抱負としたいと思います。
家元嗣 小堀宗峯