茶室だより

令和2年 家元初釜 2020年1月19日 帝国ホテル茶室 東光庵[東京都千代田区]

小堀遠州流家元初釜は、40年以上にわたり帝国ホテル内茶室「東光庵」にて行われています。令和最初の初釜は、家元家として2年ぶりということもあり、例年以上におめでたいムードの中で和やかに執り行われました。

まず寄付にてお客様をお出迎えしたのは、家元の筆による斎宮女御の歌仙絵。大和絵を学んでいたころに描いたものだそうで、この度お披露目となりました。

裏千家の「又隠」に倣った小間「東光庵」では、家元の点前により濃茶が振る舞われました。

床の松花堂筆歌仙画讃には「子の日するのべに小松を引きつれてかへる山路に鶯ぞ鳴く」(大中臣頼基)という一首が。正月最初の子の日に野に出て小松を引き抜き、庭に植えて長寿を祈る平安貴族の遊び「小松引」について書かれた歌です。
気軽に外に出かけることも叶わなかったであろう平安貴族の楽しそうな声が聞こえてくるような歌ですが、このいにしえの風俗が門松として現代にも伝えられていると聞くとより一層興味深く、また当時の人が願ったように、これからも無事にお正月を迎えられますようにという思いが強くなります。

遠州や正行の弟、正春家九代主税の手による竹花入「白雲」には、大きな曙椿と昨年中に岩手から送っていただいた突羽根が生けられました。
お正月らしいおめでたい道具で家元とお客様のお話も弾み、笑顔の絶えない濃茶席となりました。

一方、表千家の「残月亭」を写した広間「月歩」は、女子組による薄茶席。広い踏込床には、遠州家八代宗中筆の一行や舞鶴吊香炉、子年らしく打出小槌が飾られ、真ん中には大根島から取り寄せられた寒牡丹が今にも咲かんとばかりの華やかさを湛えていました。

恒例の福引ではお茶碗や家元の短冊などの景品が当たるたびに歓声が上がり、楽しく晴れやかに新年を寿ぐ初釜となりました。

家元嗣 小堀宗峯